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【日本の議論】殺人の時効廃止に賛否(産経新聞)

 「殺人の時効は廃止」−。公訴時効制度の見直しを検討している法相の諮問機関「法制審議会」が、人を死亡させた罪のうち最高刑が死刑の罪を時効制度の対象から外すなどの見直し案を答申した。答申では時効を控える未解決事件も適用対象としており、被害者遺族らから歓迎の声があがる一方、さかのぼって適用することは憲法に違反するとの観点から、反対論も依然として根強い。また、事件発生から長期間が経過することで立証が困難になるとの消極論もある中、時効制度はどう在るべきなのだろうか。 (高橋裕子)

 ■改正法は6月半ばまでに成立の見通し

 「大きな前進。被害者遺族の犯人を憎む気持ちは、時がたつにつれ薄れるどころか増大する。警察が細々とでも捜査を続けてくれていることが、心のよりどころであり生きがいだ」

 法制審は2月24日、千葉景子法相に時効制度の見直しを答申した。平成8年に上智大生だった娘を殺害された、殺人事件被害者遺族の会「宙(そら)の会」の代表幹事、小林賢二さん(63)はこう話し、見直し内容を歓迎した。

 宙の会にはすでに時効を迎えた遺族もおり、時効が成立したその日に、情報提供を求める看板もポスターも撤去されたという。小林さんは「時効を迎えれば警察は犯人逮捕の努力をしてくれなくなり、逮捕の可能性がゼロになる。警察から縁を切られる、こんな残酷なことはない」と訴える。

 見直し案では、殺人や強盗殺人など最高刑が死刑に当たる罪の時効について、現行の25年を廃止とした。それ以外の人を死亡させた犯罪は時効期間を現行のおおむね2倍に延長するなどとした。

 たとえば、強姦致死などの「無期懲役・禁固」に当たる罪は時効期間を現行の15年から30年に。「有期刑の上限である20年の懲役・禁固」に当たる傷害致死、危険運転致死は現行の10年から20年などとそれぞれ延長される。

 答申を受け、政府は刑事訴訟法と刑法の改正案を今国会に提出。会期末の6月半ばまでに成立、公布日から即日施行される見通しだ。見直し案では、過去に発生した事件について、改正法の施行時点で時効成立前ならばさかのぼって適用する“遡及”の考えを採用しているのも大きな特徴となっている。

 ■意見分かれる“遡及”の適用

 見直し案について、日本大学の板倉宏名誉教授(刑事法)は、「まったく妥当だと思う。殺人については処罰感情を重視しなければならない。被害者遺族にとって大きな前進だ」と評価する。また、「近年、DNA型鑑定などで、発生から時間が経過した証拠も以前より確保できるようになっている」と、技術革新による捜査の進展にも期待を寄せる。

 歓迎の声の一方で、消極論もある。仮に発生から数十年後に容疑者が逮捕されても、犯罪を立証できるのかという懸念は根強い。

 日本弁護士連合会は「長期間経過すると証拠が散逸し、被告人のアリバイなどの立証に困難をきたしかねない」と、冤罪(えんざい)を生む危険性などから時効廃止に反対している。

 姫路獨協大学法学部長、道谷卓教授(刑事訴訟法)も「目撃証言などの調書は証言者の死後も証拠として採用することが可能だ。数十年前の調書だけが独り歩きするのではないか」と懸念を示す。

 捜査現場も現実的な問題に直面する。捜査の長期化で限りある捜査員や予算をどう配分するのか。警察庁関係者も「捜査員は皆、できる限り捜査を続け犯人を逮捕したいと思っている。だが、増え続ける証拠品の保存などに課題がある」と話す。

 議論をより複雑にしているのが、時効が進行中の事件にも適用されるとしている点だ。

 改正刑事訴訟法の施行後に発生した事件しか時効廃止の対象としなければ、時効廃止を求めてきた未解決事件の被害者遺族にとっては意味がなくなる。宙の会の小林さんは、「過去の事件にも適用されない限り、今のメンバーは報われない。盛り込まれたことは大変ありがたい」と話す。

 だが、この点をめぐっては憲法上の論議があり、専門家の間でも意見が分かれるところだ。

 道谷教授は「刑法の一大原則であり、憲法39条に定める“不遡及”に反するといわざるを得ず、弁護側が憲法違反を主張する可能性も否めない」と危惧(きぐ)する。一方、板倉名誉教授は「憲法39条は犯行当時に犯罪でなかったものを後から犯罪とすることを禁じている。時効については憲法に違反しない」と主張している。

 ■海外事情と日本の世論

 海外の時効制度に目を転じると、英国やカナダなどごく軽微な罪を除いて時効がない国もある。米国は連邦法上、死刑に当たる罪に時効がない。

 また、ドイツはナチス犯罪を訴追するため「謀殺罪」の時効延長を繰り返し、1979年に廃止。1989年の首相暗殺事件の時効が迫っていたスウェーデンは今年2月、殺人などについて廃止を決めている。

 両国は凶悪事件を追い続けるために法を整備したようにもみえる。日本でも順当に改正法が施行されれば、現行法では来年9月が時効の小林さんのケースや、3人の女性が殺害された八王子市スーパー強盗殺人事件(平成7年7月発生)、東京世田谷一家殺害事件(12年12月発生)などで時効がなくなる。

 内閣府が今月6日に公表した世論調査結果では、殺人などの時効が25年となっていることに対し、「短い」と疑問視した人が54・9%にのぼった。主な理由は「時間の経過によって犯人が処罰されなくなるのはおかしい」などで、今回の答申は被害者だけでなく世論の「“逃げ得”を許さない」という声に応えるものともいえる。

 ■被害者遺族の思いもさまざま

 ただ、時効廃止を巡る被害者遺族の思いはさまざまだ。法制審の答申を受け、時効廃止を訴えてきた「全国犯罪被害者の会(あすの会)」は24日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見。代表幹事の岡村勲弁護士(80)は「まったくなかったものができる。一日も早く答申が立法化されるよう願う」と評価した。

 同会は被害者に重い障害を残した罪などにも、時効廃止を適用すべきだと求めてきたが、実現しなかった。岡村さんは、7年に発生した殺人未遂事件で妻が後遺症に苦しんでいる同会幹事、林良平さん(56)のケースを紹介し、「場合によっては殺人よりも長い苦しみが被害者や家族に続く。今後の課題にしてほしい」と求めた。

 林さんの事件は事件発生から15年が経過した今年1月、時効を迎えた。林さんは会見で、「妻は今も1日4回、痛み止めのモルヒネを飲んでいる。なぜ犯人は一定の時間がきたら自由の身になるのか。ものすごくくやしい」と涙ながらに訴えた。

 一方、時効廃止そのものに反対する声もある。「被害者と司法を考える会」代表の片山徒有(ただあり)さん(53)は「時効廃止が適用されなかった被害者らは時効廃止の対象の拡大を求め、際限がなくなる」と話す。

 片山さん自身、9年に8歳の息子を交通事故で亡くし、「なぜあの時、その場で手を引いてやれなかったのか」など自責の念にかられ続けた。時効廃止で捜査が続けば、遺族や関係者は何度となく事情を聴かれる。片山さんは「時効廃止で楽になるとは到底思えない。時効はこれ以上時がたつと立証が難しいと制度的に区切るものだ」と強調している。

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